第11回関東甲信越地方会講習会
【産婦人科】  婦人科領域の超音波検査のポイント ~経腹法を中心に~ 
【循環器】   依頼別心エコー検査の進め方
【基礎】    知っておきたい超音波の基礎 
【肝臓】    びまん性肝疾患と限局性肝疾患
【血管】    腎血管および大血管の見方・考え方
【胆道・膵】 胆道疾患と膵疾患
 
10月20日(土)  第1会場  大ホール 
【産婦人科】  婦人科領域の超音波検査のポイント ~経腹法を中心に~ 
14:30 ~ 15:10
座長 : 田中 守 (聖マリアンナ医科大学産婦人科)
  吉田幸洋 (順天堂大学医学部附属浦安病院産婦人科)

 卵巣の腫瘤性病変の診断においては、従来から超音波経腹走査法によるパターン分類法が作成されており、良悪性の診断精度に関しては一定の水準を保っていたが、超音波断層法に加えカラードプラ法、および近年では3D超音波の併用によってその診断精度は格段に良くなった。
 月経周期に伴う子宮内膜の組織学的変化は超音波所見の変化として認識することができ、卵巣における卵胞形成および排卵と引き続く黄体形成の診断とも相俟って、不妊症治療の分野では超音波診断は必須の検査となっている。通常、閉経後は子宮内膜は萎縮して非薄化するが、超音波による閉経後の子宮内膜肥厚像の確認は、子宮内膜癌診断の有力な情報となる。子宮内腔に発生する子宮内膜ポリープや粘膜下子宮筋腫の診断には子宮腔内に生理的食塩水を充満して行うsonohysterographyの有用性が高い。
 本講演では、日常婦人科臨床で行われる超音波診断の実際について述べてみたい。

 
【循環器】  依頼別心エコー検査の進め方
15:10 ~ 16:30
座長 : 宇野漢成(東京大学医学部附属病院コンピュータ画像診断学/予防医学講座)
  1. 心電図異常
  石津智子  (筑波大学 臨床検査医学)

 心電図異常の次は心エコー図が診断の決め手となることが多い。主治医が想定している疾患、あるいは想定外の疾患かもしれない。心電図所見に応じて、どれだけ心エコー図鑑別診断の引き出しを持っているかが大切である。「見ようとしないと見えない」のが心エコー図である。この企画では、代表的な心電図異常と疾患の組み合わせを、実例を提示しながら解説したい。

2. 心拡大
  原田昌彦  (東邦大学医療センター大森病院 臨床生理機能検査部)
 心拡大の精査で心エコー検査の依頼を受けることはしばしば経験するが、この評価法として、日常診療で最も簡便なのが心エコー検査であり、また、得意分野でもある。一般に心拡大とは胸部X線正面像の心陰影の拡大を意味する。心陰影の右縁(右第Ⅱ弓)は右房、左縁(左第Ⅳ弓)は左室の辺縁より構成され、右房あるいは左室の拡大は心陰影の拡大をきたすが、右室や左房が著しく拡大した場合も心陰影は拡大する。さらに、心膜腔に液体が貯留した場合でも心陰影は拡大する。このように、心拡大は、1)何れか1つあるいは2つ以上の心腔の拡大、2)心膜腔に一定以上の液体貯留、3)心臓以外の病態、を意味する。心エコー検査を行う前には、必ず聴診(心雑音の有無)と心電図(心房細動、異常Q波、R波減高、ST-T変化など)を確認することが重要である。本講習では心拡大をきたした症例を提示しながら、心拡大における心エコー検査の進め方について解説する。
【基礎】  知っておきたい超音波の基礎 
16:30 ~ 17:00
座長 : 竹内真一 (桐蔭横浜大学医用工学部臨床工学科)
      山口 匡 (千葉大学フロンティアメディカル工学研究開発センター)

 超音波診断は他の診断モダリティに比較して高速かつ簡易に繰り返し検査・診断を行えるため、一般に広く活用されている画像診断法であると言える。しかし、他のモダリティに比較して視野が狭いことや、分解能が進度に応じて大きく変化するなどといった特徴的な問題があるため、他の医用画像とは分けて考えられることも多い。その一方で、それらの問題を解決しようという技術的な試みや、逆に診断や処理に応用してしまおうという研究も多くなされており、超音波を用いた生体組織の質的評価も試みられている。
 本講演では、超音波診断装置において断層像を描出する際に起こりえる一般的な問題について、音波の発生や伝搬といった基礎的な超音波物理の見地から解説し、それらに対する対処技術および現状での問題点について述べる。

 
【肝臓】  びまん性肝疾患と限局性肝疾患
17:00 ~ 18:00
座長 : 森 秀明 (杏林大学医学部第3内科)
  1. びまん性肝疾患の超音波検査のポイント
  住野泰清 (東邦大学医療センター大森病院 消化器内科)

 びまん性肝疾患の超音波所見に関しては、脂肪肝をはじめ様々な疾患の特徴的所見が報告されてきた。もちろんそれらの所見だけで診断確定に至ることは難しいが、補助的診断法としては結構役立つものである。
 当日は日常診療におけるお役立ちツールとしてのBモード超音波についてお話しさせていただく。まず大切なのは「検査の精度管理」、それを支えるのが検査の技術とコツ、そして心構えである。経験豊富な検者であればすでに自分流にアレンジして日常励行していることばかりであろうが、長年やっているとつい初心を忘れ,漏れの多い検査になりがちであるため述べさせていただく.
 引き続き時間の許す限り、特徴的・典型的な画像を順次お示しするつもりであるが、知っておくと必ず得をする所見ばかりなので、これを機会にぜひ再確認していただきたい。単に病変の有無を論ずるだけでなく、肝臓を理解することの楽しさをお伝えできれば幸いである。

2. 限局性肝疾患の超音波検査のポイント
  斎藤明子  (東京女子医科大学 消化器内科)
  超音波診断の基本はB-modeであることは言うまでもない。確実なB-modeの情報が得られれば、び慢性・限局性を問わず、大半の肝疾患の診断が可能と言っても過言でないと思う。しかしドプラや造影超音波は容易に超音波の弱点や技量をカバーできる利点がある。
 今回は限局性肝疾患の診断における造影超音波の使い方とその所見を中心に述べる。
10月21日(日)  第1会場  大ホール 
【血管】  腎血管および大血管の見方・考え方
16:00 ~ 17:00
座長 : 松村 誠 (埼玉医科大学国際医療センター心臓内科)
      金田 智 (東京都済生会中央病院 放射線科)

 動脈硬化性疾患の増加とともに、高血圧症例の腎動脈の検査依頼が増えている。動脈硬化症による狭窄は腎動脈起始部におこることが多く、カラー断層像で狭窄部はモザイクパターンとして表示され、最高血流速度が180cm/秒以上であれば高度狭窄と診断される。また末梢側でのドプラ波形で,加速時間の延長と、RI(resistance index)の左右差が大きい場合にも腎動脈高度狭窄が疑われる。また超音波検査では約20%に存在する複数腎動脈にも気を付けて検査しなくてはならない。超音波検査は造影CTや造影MRIに比べて正診率が低いが、腎動脈狭窄のスクリーニングとして唯一現実的な検査法である。
 腎動脈超音波検査の実際、ピットフォールなど注意すべきポイントを解説する。また大動脈瘤や大動脈解離、IVC疾患など大血管疾患についても超音波検査の要点について解説する。

 
  
【胆道・膵】  胆道疾患と膵疾患
17:00 ~ 18:00
座長 : 竹内和男 (虎の門病院消化器科)
  1. 胆嚢癌深達度診断と腹腔鏡下胆摘の胆嚢床出血予防対策
  藤本武利 (平塚胃腸病院外科)

 今回は、USが①胆嚢癌深達度診断と②腹腔鏡下胆摘の安全な施行のために有用であることを重点的に述べる。
 ①では、胆道超音波診断の基本的事項に触れてから、胆嚢癌のハイリスクファクターを明らかにし、胆嚢癌のほか良性疾患に関しても鑑別診断の中で述べる。US上の胆嚢・胆管壁層構造から考えて体外超音波検査でも癌の深達度診断がかなり可能であることを強調したい。この際、病巣深部低エコー(病巣表層部が高エコーで深部が不均一な低エコーを示す所見)が表層部の乳頭腺癌と深部の豊富な線維化やリンパ球浸潤を伴う中分化~低分化腺癌巣に相当してSS癌を示すことが重要である。
 ②に関して、腹腔鏡下胆摘の二大偶発合併症の一つは出血であり、特に難渋することの多い胆嚢床出血を予防するために対策が必要である。USによる胆嚢床への肝血管進入描出例は約30%にみられるので、個々の症例の術前にUSで胆嚢床血管解剖を把握することが重要である。 

2. 膵疾患の超音波検査のポイント
  水口安則  (国立がん研究センター中央病院放射線診断科)
 空間分解能・コントラスト分解能あるいは時間分解能に優れた超音波は、他の領域と同様に膵疾患の診断に不可欠な検査である。優れた空間分解能により、今まで検出できなかった小さな病変の描出が可能となり、病変の輪郭や内部構造をより細かく把握することができるようになった。また、良好なコントラスト分解能により、病変が充実成分または嚢胞状成分で構成されているのか、充実成分の中に嚢胞状成分が含まれているのかなど、より容易に判別可能となった。あるいは膵管像や胆管像をより明瞭に描出することができるようになった。
 検査にあたっては、超音波学的解剖を把握しておくことは言うまでもなく、できるだけ多くの鑑別診断とそれらの超音波学的知識を頭の中に準備して検査に臨む必要がある。 超音波診断はしばしば他のモダリティ診断を凌駕する。
 本講習会では主に腫瘍を対象とし、的確な診断を導くために重要な超音波所見について解説する。